食味の真髄を探る 4版
#国会図書館DC
Keywords:クロマグロキハダ カツオ
国会図書館デジタルコレクション
昭和4年(1929年)
コマ番号74
ビンナガについて、「身が柔らかくて美味しくない」「安物として魚屋が使っている」と記述あり
かわいそう
#本文メモ コマ番号78
以前は、鮪漁の船が小さかつたから、(中略)鮪縄のことを一に、後家縄と呼んで居た。(中略)併し、今日は、船が大きくなつたので、縦令(たとえ)、暴風になつたからと言ふて、覆没(ふくぼつ)の難に遭ふやうなことは滅多にない
1929年時点では既に後家縄と呼ばれなくなったのね
館山の水産試験所には、ラヂオの放送機を備へて、出漁々船(しゅつりょうりょうせん)に天候を報告するやうになつて居る
(江戸時代にはマグロが近海に寄ってきたときだけ漁獲&マグロ漁の餌として重要な生きたイカが手に入らず目の前のマグロを逃していたのに対し)今日では、北海道の烏賊を冷凍したものを、銚子、勝浦、乃至三崎、焼津のやうなところでは、圍(かこ)つて居る。魚群の所在を飛行機で見つけ出すと言ふ工風(くふう)をして居る所すらあるくらゐで、船の速力も迅(はや)くなつたから、天候が極めて険悪でない限りは、何時でも鮪は獲れるものだと言つてもよい程になつた。それだから最近、十数年以来、東京に集つて来る鮪の数量が、非常な高に増えて来たので、生きの良い、旨い鮪が何時でも手に入るやうになつた。
船の大型化・機械化、ラジオ放送、飛行機、餌(北海道の冷凍イカ)でマグロが流通しやすくなったおかげで、下魚だったマグロは上等料理屋でも使うようになった
この後に
トロの鮨などは鮨通が最も喜ぶものとなつた
って書いてあったけど1929年時点でトロ需要あったんだな
でも別の場所に関西ではトロ需要がないみたいなことも書いてあったな それぞれの場所で違ったのかな
#本文メモ コマ番号81
梶木は冬がシュンであるから、年末年始の宴會(えんかい)には、是非なくてならぬものだ。併し(しか・し)刺身の材料として最も旨いのは、鰹を第一として、其次(そのつぎ)は夏のキワダ、冬のシビ鮪だ。
1位カツオ、2位キハダとクロマグロ
#本文メモ コマ番号82~83
(六十) 初鰹は旨くない
ワロタ
此頃は、春先から鰹が東京に来るが、そんなのは初鰹ではない。古背と言はれる古鰹でなければ場違の遠洋で獲つて来た新子(しんこ)だ。(中略)江戸以来、初鰹と言つて騒がれたのも矢張り斯く言ふ鰹であつて、今も昔も、初鰹の季節と品質に於ては相違はない。併し今日ではそれが江戸時代程に珍重されないのは、漁業が進歩したので、鰹に競争すべき鮪族の魚が、澤山獲れるやうになつて来たからだ。其中でもキワダ鮪は夏期のもので、食味上、初鰹よりも旨いからだ。
江戸時代に初鰹を珍重したのは、漁獲高が少なかつたからだ。今では何しろ石油發動機船(せきゆはつどうきせん)で釣りに出掛けるので、(中略)、品がすれによる珍重味は最早、失はれてしまつたのだ。東京で初鰹を昔のやうに珍重しなくなつたのは、斯う言ふ事にも原因して居るのだ。
江戸時代には優勢だったカツオだけど、それは単に品薄だったからというだけで、今(1929年)やマグロがたくさん獲れるようになってきたからさして重要魚種ではなくなっている
且つキハダの方が同時期だと美味しいとまで言われている
この後戻り鰹は絶品!と書いてあるので単に著者が脂乗った魚が好きなだけという説もある